大胆な対談・第四部「輝け!コミカライズ」

(辰)さ〜て、コミカライズだ。
(ま)ちょっ、ちょっと待ってくださいよ。コミカライズって何ですか?
(辰)まっそのぉ、漫画でないものを漫画にすること、今でいうメディアミックスだとまんが秘宝編集長ゴリオリバー岩佐が言っておるぞ。
(ま)はぁ...?
(辰)つまり映画やテレビで発表されたものを漫画化することだよ。
(ま)ふ〜ん、それがどうかしたんですか?
(辰)だから俺や俺の友だちが学年誌や月刊てれびくんなどで原作を勝手に解釈して描きなぐっていたんだよ。俺が初めて手掛けたのは月刊てれびくん5年3組魔法組だな。初代オバQの声をあてていた曾我町子主演の実写ドラマだ。
(ま)へ〜、じゃあ漫画を描く前にスタジオの収録風景を取材したり監督と打ち合わせしたりとか大変だったでしょう?
(辰)全然。
(ま)えっ?
(辰)だって、ある日突然に編集部から、出演者とおぼしきスチール写真を数枚渡されて「じゃあ別冊付録用64ページ頼むよ!」だけだもん。
(ま)テレビ放送用シナリオとかは?
(辰)だからそんなものないってば。どんな内容かタイトルしか知らないんだから。あとは想像力で描くしかないよ。で原稿を渡した後に第一回放送を家で見てやっと設定がわかったんだから。
(ま)じゃあその後はテレビに合わせて?
(辰)いいや。だってその後テレビ見なかったもん。
(ま)そーゆーもんなんですか?
(辰)さぁ、他の人はどーだかしらないよ。その他にデンセンマンも描いたよ。
(ま)あのキャンディーズも出ていたみごろたべごろ笑いごろの?
(辰)すまん。それ見てなかったんだ。たぶん裏番組見てたんだよ。
(ま)資料によりますと同時期に冒険王で北見けんいち先生がやはりデンセンマンを描かれていて奇しくも競作になってますね。
(辰)らしいな。つい最近までしらなかった。
(ま)よくそんなんで仕事してましたね。
(辰)漫画仲間のコミカライズでいちばん有名なのはかたおか徹治ウルトラマンだね。
(ま)たしかウルトラマンが酒に酔って暴れる漫画を描いて当時の子供達の間で話題になりましたよね。
(辰)らしいね。つい最近までしらなかった。
(ま)なんかそんなんばっかりですね。
(辰)いやぁ、当時新婚だったもんでワハハ。
(ま)何の関係があるんですか!
(辰)いや、5年3組魔法組の原稿64ページ一人でやるのはきついし、アシスタントはいないはで、妻にベタを塗らせたんだよ。妻は第一回のゲラが出たのを見て初めて自分の手を入れた部分が印刷されて感激しておったな。第一回目だけだったけど。
(ま)奥様は漫画経験は?
(辰)ない!ずぶの素人だ。けっこーベタがはみだしてたけど新婚ということで許した。
(ま)誰がですか?読者ですか?
(辰)俺様だよ。
(ま)はいはい、そうですか。よかったですね。
(辰)でもなぁ、若手漫画家としてはオリジナルものを描きたいわけだよ。それでてれびくんではCMとうちゃん、テレビランドではつっぱりあんちゃんというのを描いていたんだよ。
(ま)随分なタイトルですね。
(辰)いいんだよ、中身で勝負なんだから!
(ま)どんな内容だったんですか?
(辰)忘れた!
(ま)他にお友達はどんなコミカライズを?
(辰)篠原幸雄がガッチャマン、新宅よしみつがトリプルファイターを描いてたような。
(ま)他には?
(辰)かたおか徹治と金城広道と俺で若いモッコの会というのを結成したな。
(ま)何か合作されたんですか?
(辰)いや、ただ名前をつけただけだよ。若い根っこの会のダジャレだと思うけど、名付けたのは山上たつひこ先生だ。
(ま)あのガキデカの?どーゆー関係で?
(辰)かたおか徹治が高校、大学生のころ山上さんのアシスタントをしていて金城さんはそこのチーフで俺はただの山上ファン。
(ま)ただのファンてのがなさけないですね。
(辰)でも高校3年の夏休みだったかに山上さんのところに遊びに行ったら丁度少年サンデー連載の旅立てひらりんの追い込みで急きょ手伝うことになって人物の服の模様とお釜の効果線を描いたのだよ。服の模様はOKだったのだがお釜の効果線はガタガタだったので後でかたおかが切り張りして修正していたのを俺は見のがさなかったぞ。かたおか君あの時はごめん!
(ま)今頃謝ってどーすんですか?
(辰)いや彼は本当にいい奴なんだよ。俺が後年飲めない酒を飲んでタクシーの中で吐いた時、同乗していた彼がタクシーの運転手と喧嘩しながら深夜にタクシーを洗車してくれたことがあってね、俺は一生あの恩は忘れないよ。このつながりが後の三人社結成につながるんだよ。
(ま)また、若いモッコの会みたいなもんですか?
(辰)ばかも〜ん!これは実体があったんだよ!
(ま)はぁ・・・。
(辰)じゃあ、ちょっと休憩。


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